それと為替との直接の関係は微妙だ。むしろ為替は「半値戻し」をキーワードで引き続き考えたい。円高へ基調転換が始まった当初は、とくにドルは「半値戻し」失敗から本格下落に向かうケースが基本だったからだ。
現在までのドルの最大下げ幅、つまり124.14→111.60円の半値戻しは117.87円で、現在の水準よりかなり遠い。ただし、ユーロ円は、169.05→149.25円の半値戻しが159.15円だから、ここ数日はまさに半値戻し攻防になっている。本当に今の動きが円高基調始まりなのかどうかを、まずユーロ円で試しているようではある。 ドルの底割れが広がり始めている。それは総合力を示す実効相場での話だ。ドルは対円でこそ、8月の安値よりまだ高い水準で推移しているが、総合力を示す実効相場は最安値を更新、ちょっと「止まらないドル安」の様相になっている。FRBが算出している主要通貨を対象としたドル実効相場、メジャーインデックスは、7月24日の76.78でいったん底打ちとなっていた。ところが、8月中旬からあらためて下落を再開、9月7日、例の「雇用統計ショック」、発表された米雇用統計が予想以上に悪かったことからドル安加速となった日、ついに最安値更新となり、その後も続落している。
対円のドルは、8月17日に一時111円台まで急落した後は、現在に至るまでなお安値更新とはなっていないが、このように総合力を示す実効相場で見ると感じはかなり違っている。
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ドルの総合力は、8月17日の米公定歩合引き下げで、米金利先安感が再拡大となってから下落を本格化。ほとんど対円のみはドル「高止まり」気味となっていたが、その対円でも「雇用統計ショック」で下落再燃となると、いよいよ最安値更新、「底割れ」が広がり始めているわけだ。
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別な見方をすると、ドル全面安がついに対円にも波及するきっかけになったのが「雇用統計ショック」だったということなのかもしれない。そもそもこの間のドル円は、むしろドル実効相場と逆行関係にもなっている。その意味では、ドル実効相場が下げ止ったら、逆に対円でのドル安が本格化する可能性も考えられなくない。どちらにしても、円高を考える上でも気になる「止まらないドル安」だ。ところで、そんな米ドル以上に弱い状況が続いているのがNZドル「キウイ」。キウイは、総合力を示す実効相場を見ると、8月は主要通貨の中で最も下落した通貨、「最弱通貨」だったが、その状況は9月に入っても変わっていない。
それぞれの通貨の総合力を示す実効相場を調べたところ、8月中の最大下落率はキウイが10.9%でトップ、次いで豪ドル「オージー」の8.1%だった。こういったオセアニア通貨の下落率は、一方でドル、ユーロ、ポンドといった欧米主要通貨の8月最大下落率がせいぜい1%前後だったのと比べていかにも大きい。
ところで、そんなオセアニア通貨安の状況も9月に入って微妙に変わっている。9月10日までの段階で、キウイの下落率は2.6%で引き続き主要通貨の中で段トツ。これに対してオージーは0.1%と小幅ながらプラスに転じている。オージーに下げ止りの兆しがあるのに対し、キウイは続落に変化なしというわけだ。
ちなみに、その他の通貨では、米ドルが9月10日までの段階でマイナス1.2%、英ポンドもマイナス0.3%。これらと比べてもキウイ下落率は一際大きく、9月に入ってからも最弱通貨の様相に変化がない。一方で最強通貨は、もちろん8−9月と2ヶ月続けて円となっている。 一日で5円以上ものドル急落が起こった時にはどうなるものかと思ったものの、その後は拍子抜けするような一進一退、レンジ相場が続いた。しかしそんなレンジ相場にも終わりがやってくる。あの急落が起こった日から17日目、ドル急落の第2幕目が始まった――。 さて、これは8月中旬以降の為替について説明したものではなく、今から9年前、98年の9月から10月にかけての為替を解説したものである。しかし途中まで、最近の市況解説と錯覚した人がいても当然と思えるくらい、それほど両者は似ている。
98年の9月から10月にかけてのドル円と、今年8月中旬から最近にかけてのドル円の動きは、水準と変動率は違うが、しかしリズムはかなり似ている。98年の場合、ドルは8月11日の147円から9月11日にかけて128円まで急落。その後は132−136円中心のレンジ相場が続いた。それに対して今回は、8月17日にかけ111円までドル急落した後、最近にかけて114−116円でのレンジ相場が続いている。
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ところで、98年の場合、レンジ相場は16営業日で終了、最初のドル急落が起こった9月11日から17営業日目から、急落第2幕が始まった。さて、今回の場合、8月17日の急落の日から、本6日が14営業日目になる。98年のパターンを参考にするなら、そろそろレンジ相場の終わりも意識する必要があるだろう。
ちなみに、98年の場合、レンジ相場が16営業日で終了となったのは、雇用統計の悪化が一つのきっかけになったようだ。その意味では、7日発表の雇用統計は注目で、それ次第で少し状況が変わる可能性ももちろんある。
いずれにしても、このようなアナロジー(類似性)への注目は客観的判断材料として必要だろう。レンジ相場も、始まったばかりの頃は、主観的判断においてそれがいつまで続くかはわからない。しばらく続いてはじめて、それがレンジ相場だと認識する。しかしそれを認識した時には、すでにレンジ相場の終わりが近い可能性すらある。
つまり、ドルが急落した8月16、17日の直後に、しばらく114−116円でのレンジ相場が展開すると主観的に判断するのは難しかっただろう。しかし実際にそれを目にして、114円でドル買い、116円でドル売りが有効だと気付く。ではこれがいつまで有効に機能するか、それ判断するためには、アナロジーのような客観的判断材料が必要だということだ。
もちろん、客観的判断材料にも質の違いがある。投資家の立場に立てば、自己の主観性を少しでも抑制できる良質の客観的判断材料を提供してくれる情報を求めるのが、本来は当然過ぎるほど当然な話だと思う。有力FEDウォッチャーとして知られる米WSJ紙のG.イプ記者が先週、米利下げに慎重な見方を示して注目されている。実際、ワシントンの政策通たちの間では、FFレート引き下げになお懐疑的な見方が根強いようだ。FRBは今後も、公定歩合は下げるものの、FFレートは下げない可能性があり、その場合の相場混乱再燃には要注意ではないか。 FF先物などを見る限り、市場はFFレート引き下げを完全に織り込んでいる。たとえば、9月FOMCでの0.25%利下げはほぼ100%織り込まれ、0.5%の大幅利下げさえ一時は60%程度まで織り込み度が上がっている。
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また、政策金利を反映するとされる2年債利回りも最近FFレートを1%程度も下回っている。これはFRBが早期に、しかも断続的に合計1%利下げに動くことを織り込んでいる意味になる。
しかしこういった市場の織り込みと、政策通たちの見方にはかなりのギャップがありそうだ。WSJ紙のイプ記者は、バーナンキ現FRB議長の前任者、グリーンスパンに近いとされ、FRB政策の代弁者といった意味で「FEDスポークマン」とも呼ばれる人物だが、同氏は最近の記事でFF下げに慎重な見方を示した。
ほかにも、ワシントンの政策通の間では、バーナンキがFF引き下げに動くことへ、懐疑的な見方がじつはきわめて根強い。「バーナンキの基本的な考え方からすると、実体経済悪化懸念なくFF下げに動くとは考えられない」(ワシントン筋)といった具合だ。
バーナンキの基本的な考え方は、2002年の講演が前提とされることが一般的だ。その中でバーナンキは、実体経済の影響に対してはFFレートで、そして金融システム問題には公定歩合で対応する方針を示している。
その意味では、今回流動性危機の様相となった動きに対して、8月17日、緊急公定歩合下げに動いたのは、まさに「バーナンキ・ルール」通りだった。そしてそのルールからすると、本来なら実体経済悪化との判断は、たとえば雇用統計なら、失業率5%超、NFP(非農業部門雇用者数)が純減に転落でもしない限り、FF下げはないとの解釈が基本になる。
今回は、流動性危機の中で、株価の急落、為替の乱高下などがあった。しかしこれについては、バーナンキなど政策当局者たちは、基本的に行き過ぎの修正で正常化される過程での結果と見ている可能性が高く、その意味では相場安定化のための金融政策発動も考えにくい。
このように見ると、バーナンキがルール変更でFF下げに動くかが焦点になっているわけで、その割には早期かつ大幅利下げを織り込む市場の動きとはかなりのギャップがありそうだ。この裏には、市場が前FRB議長、グリーンスパンのスタイルに慣れた状況から切り替えできていない可能性がある。
その意味では、バーナンキが今回グリーンスパン・スタイルへ合わせることなく、自らの方針を貫く場合は、市場はもう一度「梯子を外される」リスクも警戒される。 本日30日は、17日の緊急米公定歩合引き下げから13日目になる。ところで、今回との類似が注目されている98年の金融不安相場では、第一幕のヤマ場となった大手ヘッジファンド救済策が決定した日から、まさに13日後から第二幕の急落相場が始まった。その意味では、ちょっと気になるタイミングに近付きつつある可能性は一応要注意だろう。98年、信用不安が急拡大する中で、8−10月にかけて約2ヶ月で147円から111円まで30円以上のドル大暴落となった悪夢の相場は、大きく2つの局面に分けられるということを、最近私はよく指摘してきた。
このうち一幕目は、8月11日−9月11日にかけての一ヶ月で147円から128円まで20円のドル急落となったもの。この場面の主役は大手ヘッジファンド、LTCMで、同社の破たん懸念で株急落、ドル急落となった面が大きかった。
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そして二幕目は、10月6−8日、「恐怖の3日間」。たった3日でドルは135円から111円まで25円近くもの大暴落を演じたのである。そしてこの場面での主役もヘッジファンドだったが、今度はLTCMではなかった。タイガーファンドの円キャリー巨額損失懸念が「円の暴走」をもたらした面が大きかった。
注目されるのはこの一幕と二幕の間である。9月23日に、NY連銀の調整によってLTCM救済策が決まった。これは、いうなれば大混乱一幕目の「元凶」の処理に決着がついたということだろう。ところが、結果的にはその日から13日後に、為替としては一幕以上に悲惨な二幕が始まったのだった。
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